番外編です。本編途中の話になります。まだ二人が恋人になっていない時です。読了目安およそ2分
片思い中の合コン話
寒い冬が続く中三学期が始まり、放課後に半藤がA組の前を通りかかった時の事だった。偶然にも廊下で空宗と根の二人に出くわし、そのまま立ち話をする事になった。二人は去年の冬休みに飯島の家で大晦日に集まっていた面子だ。
クラスは違うが、比較的話しやすく誰に対しても友好的な二人の事はそれなりに評価していた。何の脈絡もない話を三人で続けていると急に空宗の方からこんな言葉が発せられる。
「なあ今度この三人で合コンしない? オレ、女子校に知り合いがいるから残りの二人呼んでもらってさ」
すると隣で聞いていた根は直ぐに良いなと声を返し、その提案に同調する。
「俺も彼女欲しいからやろうぜ!」
そう言って二人は乗り気になっていた。そこから二人は意気投合して話をどんどん膨らませていく。具体的にいつが空いているのか、相手はどんな女の子を呼んでもらうのかなど今すぐにでも行いそうな勢いの二人を前にして半藤は言葉を放った。
「俺はいいや」
「「えっなんで!?!?」」
二人の息はぴったりだ。そう言って驚きを露わにする二人の友人に、半藤は爽やかな笑みを向けながらこう答える。
「好きな子いるから」
「えっ!?」
「誰っ!!?」
半藤の想い人の話題に飛びつくその二人に半藤はしかし動じることもなく即答した。
「秘密。好きな女の子を簡単に話すほど俺は口軽くないよ」
そう言ってひらひらと手を揺らして見せると空宗と根は残念そうな顔をしながらも文句を口にする事はなかった。やはりこの二人は性格がよくできている。
そんな事を思いながら彼らを見据えていると根は「マジか〜」と口にした後に「本気っぽいな」と言葉を漏らす。半藤はその発言を耳にして改めて自分の中でその想いを実感していた。
「そうだね、本気だよ」
(もう一生、ずっと好きだから)
そしてその想いに固く誓うのだ。己の本気の気持ちを。これまでに感じた事のない大きな感情を。一人の愛しい女の子を思い浮かべながら――。

