バドわたエピソード2

小説

後日談です。バッドとみる香が付き合っている時の話。一琉=バッドです。読了目安およそ2分

とある日

「なー彼女の好きじゃないとこある?」

 恋人であるみる香の委員会が終わるのを待っている時の事だ。一琉は偶々教室に居残っていたクラスメイトの南田と世間話をしていた。

「え、ないよ?」

「は!?」

「全部好きだし」

 一琉は迷う事なく涼しげな顔をして南田にそう告げる。

 みる香に対する欠点や不満など思いつかなかった。彼女がどのような事をしていても可愛らしいと思えるし、本人は欠点に思っているであろう事柄も一琉にとっては可愛くて仕方がない。

「いや、そんなんあり!? ここには俺たちしかいないんだし、見栄張らなくていいんだぜ?」

 南田は焦った様子で再度そう問い掛けてくる。しかしないものはない。

「見栄とかないよ。本当に全部好きだからさ」

「いやいやいや、一つくらいあるだろ……俺なんか彼女のさ、寝坊癖に時々イラッとしちゃうし」

「あー、そういう気持ちは分かるよ」

 南田の発言に一琉は同調の声を上げる。その経験は確かに自身にもあり、共感できるところはあった。南田はその反応が嬉しかったのかすぐにこちらに声を返してきた。

「おっわかる!?」

「いや、みる香ちゃんにはないけどね? 元カノの好きじゃないところはあったなと思ってさ」

 一琉はそう言うと爽やかに笑みを向けた。

 みる香の好きじゃないところは探したいとも思わないが、探したとしても見つかるはずが無いだろうと自分でよく分かっている。自分はそれほどまでにみる香に首ったけだからだ。みる香の事であればどんな事も一琉の好きなものに変わるのだ。

「マジもんのマジで一つもない? 本当に!?」

 南田はしつこくも再三そう尋ねてくる。しかし一琉は笑顔の調子は崩さずに言葉を返した。

「ないない。だって全部可愛いからさ」

 そう言って手を振ってみせる。みる香の話をしているせいかそろそろ彼女に会いたくなってきていた。

 一琉はそんな事を思いながら唖然としてこちらを見ている南田に言葉を付け足す事にする。

「彼女の欠点が好きになれないなら別れていいと思うよ」

「いやっお前簡単に言うな……!?」

「だってもっと相性いい子がいるかもしれないだろ? まあ俺には関係ないから好きにしなよ」

 そう言うと鞄を肩にかけて教室の出口へと歩き出す。

 そろそろみる香の委員会が終わる時間のため迎えに行こうと考えての行動だった。南田は一琉の台詞に呆気に取られながら取り残された教室で一人こう呟くのだった。

「半藤、マジで変わったな……」

 それは一琉がプレイボーイではなくなったと思える瞬間の出来事だったと後に南田は語る。

エピソード集

タイトルとURLをコピーしました